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エコラム(過去分)

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最新のエコラム

2017年2月

私たちの生活と森林~「地球環境を守る森林」~

奈良県には、宇陀地域を源流とする木津川(淀川)、大和高原を源流とする大和川、高見山や大台ケ原を源流とする吉野川(紀ノ川)、大台ケ原や大峰山地を源流とする北山川・十津川(熊野川)と大きく分けて4つの河川があり、それぞれの上流域には豊かな森林があります。森林は土砂災害の防止やきれいな水を作るほか、地球温暖化の原因の一つである二酸化炭素を吸収したり、いろいろな生物のすみかであったり、人に潤いや安らぎを与えるなど様々な役割を果たしています。

日本の多くの森林資源は、成長した木が利用されず世界中から木材を輸入している状況の中、熱帯林を保護し、国内の森林を活用することが望まれます。また、森林を育て自然を守るためには人の手を加えることが必要です。森林を増やすだけでなく、木材を有効に利用することにより大きな環境問題である地球の温暖化を防ぐことに繋がります。昔から山が荒れると山崩れや洪水などの災害が起こるので、木がなくならないように森林を育て利用する技術と森林を修復する技術など森林の大切さを学んできました。

日本の川は、川の長さに比べ高低差が大きいので土に浸み込む限度を超えて降った雨が、地中を通らずに地表を走り急な流れとなって河川に入ります。昭和57年に起きたJR王寺駅周辺の洪水時には生活機能が広範囲に麻痺し、食料支援のために川となった国道168号をボートで漕ぎ、王寺小学校まで届けられていました。

奈良県の面積の5分の1を占める十津川村は、96%が急峻な森林です。平成23年秋の紀伊半島大水害以前から林業振興や6次産業化などをすすめられていましたが、被災し、山を守ることが村民を守り、ひいては地球環境を守るのではないかと林業再生に村の未来をかける取り組みが行われています。

イオンモール橿原内の「十津川の森木灯館」で年間を通じて、十津川の木に触れる森に触れるイベントを企画し村内林業体験や木工体験などを開催しています。1次産業である林業の「植えて→育てて→採って→植えて」という循環は、都市部の木材消費と山村との共生を目指してすすめられています。現在社会では、日常生活の中で森林や林業に接する機会が少なくなっているので、微力ながら様々な体験活動を通じて森林と人々の生活や環境と関係を深める「森林環境教育」の取組を推進していきます。

川辺 惠美子

2017年1月

奈良市には市民放射能測定所があります。

2011年の東京電力福島原子力発電所の事故後、市民でお金を出し合い日本製の放射能測定器を購入し、事故後、2年目の3月に開所しました。週に3日ほどメンバーが交代で測定をしています。

チェルノブイリ事故後も大阪で市民がお金を出し合って測定が始まったことを思い出しました。1989年にソ連から帰国した友人から、現地で紅茶をいただいたからと言っておみやげをもらったことがあります。チェルノブイリ原発事故のことが生々しく記憶にあり、おみやげの紅茶を測定してもらったことがあります。その時の値はすでに忘れていますが、NDではなく2桁の値が出ました。日本の輸入基準以下ではありましたが、飲むことはできませんでした。

そんな記憶がよみがえり、福島原発事故後は、食料の測定は必要だと思い、会員になっています。測定できるのはγ線のみとすべてではありませんが、指標になると思っています。もちろん、チェルノブイリ由来や、1950年代に多く行われた核実験由来のものも測定されています。福島原発事故由来の放射能であるかどうか、どの程度影響を受けているのか、食品の添加物や農薬を気にするように放射能にも注意を払うようになりました。

堀田美恵子

2016年12月

奈良での市民共同発電所づくり15年を振り返って

2002年9月に奈良で市民共同発電所をつくろうと思い、サークルおてんとさんを立ち上げ、来年は15年になります。また、2013年にはおてんとさんの法人化と同時に一般社団法人地域未来エネルギー奈良として市民ファンド対応やさらに幅広い活動のための法人を立ち上げました。

振り返れば、再エネを取り巻く状況は、福島の原発事故以降、国のエネルギー政策とともに大きく変わり、私たちの活動も変化を求められ続けました。2002年当時、私は生協の理事であり、新店舗(コープ朱雀)建設計画が理事会にかかっていました。21世紀にふさわしいお店にするために市民(組合員)の力で再エネを積極的に導入したいという提案をしていましたが、当時は、太陽光発電は見返りがない大変高額な投資であり、厳しい競争を強いられる店舗には採用されることはありませんでした。

しかし、特別養護老人ホームあすなら苑(大和郡山市)の前理事長のご賛同とご協力の元、その屋根の上で1号機(太陽光発電設備20kW)がNEDOの半額助成と寄付金で総額1830万円をかけて作られました。現在新たな市民共同発電所の建設準備に入っていますが、太陽光パネルの価格が大幅に安くなったと実感しています。私が関わる市民共同発電所は、今回、奈良県内で6カ所目(合計110kW)となりますが、すべて資金の調達方法が異なります。

2012年7月には固定価格買取制度(FIT)が導入され、その後、買取価格が下がる中で、FIT導入前の寄付を集める手法から、出資配当型へ、そしてまた建設協力金+寄付型に戻ります。資金調達方法は変わっても、市民共同発電所にお金を投じてくださる方たちの思いは変わっていないと感じています。

今では、生協もほとんどの事業所の屋根の上に太陽光パネルが載り、全量売電しています。買取価格の低下とともに、電気を「売る」より「買う」方が高い事例も発生し、自己消費して余剰は蓄電池や電気自動車で使うようにもなりました。地元の人とともに東吉野村では小水力発電にも手がけ、木質ペレットストーブも全事業所に配置するようになり、そして子会社が電力事業にも参入するようにもなりました。

奈良県内では、送電線に繋げない場所も出てくるなど課題もでてきており、時代とともにめまぐるしく変化しています。今まで通りの市民や子どもたちへの啓発事業、地域のバイオマス熱利用など再エネを通じた活性化を願い、広がったネットワークと知り合った様々な方々のお力をお借りして活動を続けていきたいと思います。

清水順子

2016年11月

原子力発電所の安全性向上と早期稼働に向けた取組の状況!

温暖化対策にかかるパリ協定に中国、米国は批准する見通しとなり日本も今秋の国会で承認して年内には世界55カ国以上が賛同すれば、発効する模様である。

エネルギー自立率5%の日本は2030年度には原子力発電をベースロード電源と位置づけ、原発電源比率を20~22%と策定した。原発を稼働するにあたって福島原発における事故の教訓から、各地で停止している再稼働予定の原発では真剣に地震、津波対策工事をするようになった。 具体的には更なる安全性/信頼性をめざした新規制基準(深層防護の徹底)、良好事例、新知見の対策を採用するようになった。その状況の一部を紹介したい。

泊原発では16.5m(福島の津波15m)の防潮堤に増設し、各建屋出入口は水密扉に改善し、2.12kmの森林火災帯設置、竜巻対策、外部電源ルートを多重化、バックアップ電源(空冷)を追設し、水供給ポンプの多重化/多様化、給水タンクの高台設置、水素爆発防止装置設置、放射性物質拡散抑制放水砲配備等がなされるようになった。(北海道電力の株主総会資料から)

美浜原発では11.5m、大飯原発では8mの防波堤に変更しその他は両原発とも外部/所内電源の強化、海水取水手段の多様化、炉心の直接冷却手段の多様化、各種給水ポンプを設置する等、安全対策は以前より向上していた。(8月、9月視察)

安定したエネルギーの確保、CO2削減の視点から早期の再稼働を期待したい。

千葉 佳一

2016年10月

高速増殖炉「もんじゅ」の行方

政府は9月21日に原子力関係閣僚会議を開き、高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の廃炉を含めた抜本的見直しの方針を決めた。

「もんじゅ」は、軽水炉原発の使用済みウラン燃料からプルトニウムを抽出し、再び燃料とする原発で、燃料が増える「夢の原子炉」と期待され、1994年4月に運転を開始した。しかし1995年12月に二次冷却系からナトリウム漏れ事故を起こし、事後処理の不手際から今も停止している。

2012年に原子力規制委員会から1万件もの点検漏れが指摘され、対策漏れが残り2015年11月に「抜本的見直し」勧告を受けた。既に1兆円を費やし毎年200億円が要ると問題とされている。「もんじゅ」は、運営主体の日本原子力研究開発機構の士気と能力が問題のようだが、技術的には世界唯一の高速増殖炉原型炉で先端的である。専門家は先端技術は経験を重ね改良が必要と言う。

今世界は原発増設に向かい、100万kW級原発400基が15年後に中国など200基増えるとされる。温暖効果ガスは世界で年300億t-CO2排出され、一方自然吸収力は年110億t-CO2で、地球温暖化防止のため2050年にCO2排出量の80%削減が必要とされる。再生可能エネルギーは増やしても、原発は必須である。エネルギー確保は、先の世界大戦が石油争奪戦と言われ、国の命運を左右し、原発は重要である。プルトニウムの高速炉は30数年前からフランス、日本、ロシア、インドが開発運転し、最近中国も運転を始めた。有害プルトニウムの活用とウランの100年後枯渇に備え、世界は2025年頃から高速増殖炉の開発競争に入ると見られる。「もんじゅ」に関する規制委の指摘は、本質でなく書類不備の「自動車のバックミラーの裏のホコリ」類と言われる。

最先端技術「もんじゅ」は、反原発の心情で判断せず、運営者組織を改善し、安全性を確保し、廃炉にしてはならないと思う。

西田 輝彦

2016年9月

防災拠点と再生可能エネルギー

近年、毎年のように台風(含む大雨)や地震等による自然災害の規模が大きくなり、被害も甚大なものとなってきている。不幸にもこのエコラムを書いている時にも台風10号による大きな被害が発生し、また先の熊本地震においても我が国は大きなダメージを受けている。

筆者は自然災害についてのメカニズムや防災に関する講義をも行っており、その受講者の関心の度合いも年々大きくなってきていると感じられる。また、国の施策である「防災拠点等への再生可能エネルギー等導入事業」(地震や台風等による大規模な災害に備え、避難所や防災拠点等に再生可能エネルギー等を活用した災害に強い自立・分散型のエネルギーシステムを導入する事業)にも参画しているが、我が国の地域の避難所や防災拠点の防災に関するインフラストラクチャーはまだまだ脆弱であり、避難所や防災拠点がその機能や役割を果たしていないことが多いと感じられる。現に先の熊本地震においても電気・水等のインフラストラクチャーがダメージを受け、多くの被災者の方々が避難所においても苦労されていたことはまだ記憶に新しい。

前述の様に再生可能エネルギーは、現在では地球温暖化防止のための二酸化炭素排出抑制対策だけにとどまらない重要なエネルギー源であり、かつ重要なインフラストラクチャーとなっており、国や地方行政の政策や施策としても推進されている。しかし、この様なインフラストラクチャーの整備は、国や地方行政の施設だけでは不十分であることは明らかであり、筆者がかつて経験した3.11の際に東京で帰宅難民となり一夜を明かした苦労からも「民間の商業施設や店舗等の防災拠点化」(一部の商業施設では拠点化されつつある)も同時に推進する必要がある。

今後も国や地方行政の施設の地域の避難所や防災拠点に対する再生可能エネルギー等を活用した災害に強い自立・分散型のエネルギーシステムの導入の推進だけでなく、同時に再生可能エネルギー等を活用した民間の商業施設や店舗等の防災拠点化の推進をも加速されることを切望する。

阪元 勇輝
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